ようこそ、帝国劇場へ

星の光る空からはみ出した気がして せめて寂しい気持ちを空に浮かべてみた 青い月の光も 僕だけには光らない 何か伝えたいのに伝えるあてもなく この空はどこへ行くんだろう いつからか曇ったままの僕の心を照らして

 

DREAM BOYSを観劇した。


岸くんにとって初の座長作品。

岸くんにとって、カンパニーってなんだろう。仲間。家族。戦友。いろんなことを考えた。出来ればこれ以上その中から誰一人として欠けることのないように。純粋に楽しむことができるか、クリアな気持ちで臨むことができるのか入るまで正直不安だった。


帝国劇場のステージに立つ岸くんは完全にユウタに体と心を支配された岸くんだった。

顔を歪めたり眉間に皺を寄せる張り詰めた表情が多く、笑顔も本意では無いシーンが続く。そんな中ユウトとの桟橋や公園でのやり取りでは一瞬の安堵、岸くんの甘ったるくて優しい柔軟剤のような喋り方に戻る。ユウタの中に岸くんがいるんだと感じて心がほぐれる。

その後も怒涛に降り注ぐ悪夢。もしかしてもう岸くんが帰ってこないのではないかと不安になるくらいにユウタとして生きている。その姿に涙が止まらなかった。こんな大舞台で人の心を、声で、表情で、動作で、意思で、掴んで震わせる。岸くんの手は舞台サイズだなんてアドリブで言っていたけれど、岸くんそのものが舞台に立つために生まれてきたような、そんな綺麗事のようなことを真剣に思う。

弟のユウトより小さな体のどこからあんな気迫が出てくるのだろう。纏う覇気が尋常じゃ無い。恐怖すら覚える。

 


一幕の終わり「全て受け止めてやろうじゃねぇか!」赤い幕と共に奈落へ落ちるユウタ。赤い幕はユウタのユウトに対する愛の象徴に感じてしまった。無償の愛、自分の人生を投げてでもユウトを守ろうとするその強烈な赤い愛を抱きしめて人生の底に落ちていくユウタ。なかなかタイミングが難しそうではあったけどどうにか掴まえに行く気迫と十字架を背負ってしまった青年の痛々しい声に涙がこぼれた。そのあとすぐ劇場の明かりがついてしまうから困った。余韻なく蠢く会場。まずは一息。

 


思いつくままに書いてる。

物語の中で唯一と言ってもいいくらい音(を)楽(しむ)してるシャルドネオン。とても好き。タラッタタラッタティーヤだけで成立する。音楽って案外そういうものだろうな。言葉も国境もいらない、そんな背景を感じた。マダムを見様見真似で踊るミズキの愛くるしいこと。あの姿に心を救われるところがあった。リカさんの見事な滑舌でお送りされるタラッタタラッタがダンスアレンジバージョンで披露された時は思わず拍手が起こった。舞台はナマモノだな。

 


ジンの病室でのユウトとのシーン。ジンに繋がれたモニターから溢れるピッピッという繊細な音でさえ響く静寂に包まれた。真っ暗な背景に真っ白なレース状のカーテン、まるで遺影の中のような景色に感じてジンの死期はそう遠く無いのだろうなと。意識を取り戻したジン。あまりにも穏やかで、ユウトから心臓の話を告げられたときに一瞬にしてユウタとユウトを取り巻く世界を理解するその聡明さ、ジンの人柄が一番色濃く映し出されたように感じた。ジンの意識が再び無くなった瞬間に落ちてくる白い花。あの花、どうやって床に刺さるんだろう。不思議。

 


ジンに導かれて天国の門の前に佇む彼の元へ降りたユウタ。天国ってこんなに綺麗なのかな。お城のような建物に延びる階段。シンデレラガールでぴらのがジャニーさんに贈った「長い階段駆け上がって見守っていてね」が頭をよぎった。ジャニーさんもあの階段を登って天国の門をくぐったのかな、なんて。

真っ白の衣装で穏やかに佇むジン。もう天界の人だった。そんな最期の場所でふたりの想いが届き合うなんて無情だ。ユウトにジンの心臓を、永遠に3人は共に生きる運命なんだと。ジンはユウトの中に生き続ける。

 

歌唱シーンは言うまでもなくどれも素晴らしいんだけど中でもマダムとリカさんと歌うGet it!のユウタの歌声が忘れられない。完全に負けていなかった、寧ろ喰いにかかっていた。おふたりを隣に置き0番で歌う岸くんのまるで魂を振り絞るような歌唱に度肝を抜かれた。まだこんなに、出るのか。限界が分からない、見えない。普段優しく包み込んでくれる岸くんの歌声とは違う、悲しみの縁で怒りに支配される荒々しいユウタの歌声。またこんな歌声を来年も聴けると良いな。

 


岸角もいつも歯を食い絞って顔をしわくちゃにして挑む姿が焼き付いて。フライングのターンの顔の残し方も抜かりなくて。岸くんってどうしてこんなにも一所懸命なんだろう。本当にこんな人を私は他に知らないし、知らなくて良いやって思った。


リング入場シーンでユウタが真裏を通った時があってその時の闘志を胸に秘めつつ生きた心地の無い表情に目を奪われた。いつも近くに来てくれる時は必ず笑顔なのにねってぴりちゃんが話してくれたりして、ああ本当だな、彼はユウタなんだなって改めて感じたりして。

 


はあなんだか綴ることに取り留めがない。

Wゆうたの握手も片手どうしで握手してまたユウタの手を上から包み込むジンの優しい左手も大好きだ。ふたりでうたうTDBも。絆も。KPQPも。全部が宝物でどうしよう。こんなに一度に与えられると零しそうだ。必死に受け止める。なんて素敵な舞台なんだろう。何度も想い巡らせては、思う。

 


岸くんがじんちゃんとふたり主演の舞台で座長が担えて良かった。岸くんが輝ける場所は沢山あるけれど、やはり舞台のステージ上、0番の位置が一番。全人類に見て欲しい、けれどわたしたちだけの秘密の宝物にしたいような。ほんとうに岸くんが大好きだ。ずっと一番星。星の光る空からはみ出してなんかない、私の世界で一番にきらきらと真ん中で輝くのは岸くんです。青い月の光も岸くんを照らすためのスポットライトのようで、私の曇った心を照らしてくれるのも、ぜんぶ岸くん。星の瞬きのように感情が暗闇に落ちたり光で満ち溢れたり、そんな岸くんの姿がユウタを通して見れてよかった。ありがとう。岸くんではなくずっとユウタだったけど、汗をぬぐったりする所作は岸くんでそんな些細なことも嬉しかった。残る折り返し最後まで怪我なく、走りきれますように。最後の言葉がごめんなさいじゃなくてありがとうでありますように。祈ります。